外注先を紹介だけで決めない——AIのリサーチで候補を比べ、面談の質問まで用意したロゴ制作の選び直し

佐久間 元気

佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

外注先を紹介だけで決めない——AIのリサーチで候補を比べ、面談の質問まで用意したロゴ制作の選び直し

この記事の要点

事務所のリブランドで、ロゴ制作を知人の紹介で頼みましたが、作業が進まず白紙に戻しました。切り替え先は、AIのリサーチ機能で事前に比べておいたデザイン会社です。

効いたのは、AIに業者の一覧ではなく「比べ方」と「面談で聞く質問」を作らせたことでした。そのために、自社の考え方をまとめた資料を先に渡しています

紹介を否定する話ではありません。紹介の候補も、AIが出した候補と同じ質問で比べるのが、この経験から得た結論です。


外注先の候補を、同じ物差しで比べる
会計事務所の自社記録/2025年12月〜2026年3月
紹介
紹介された相手
紹介者が自分で使った相手か、知り合っただけの相手かを確かめる
AIのリサーチ
AIが挙げた候補
自社の資料を渡し、候補ごとの懸念点まで出させる
同じ質問で面談するAIに作らせた「弱点を突く質問」を、紹介の候補にも使う
決め手は面談の前に決めておく。
価格や実績は、発注前に自分の目で確かめる。

紹介で頼んだ外注は、なぜ止まったのか?

相手がこちらの考え方を読み込まないまま、進捗の連絡も途絶えがちになったからです。

当事務所は2025年末から2026年春にかけてリブランドを行い、ロゴ・名刺・ブランドガイドライン(ロゴの使い方や色、書体を定めた社内ルール集)を作り直しました。予算は30〜50万円です。

2026年1月、仲のいい知人から紹介されたデザイナーに依頼しました。事務所まで足を運んでくれ、入口の印象は良いものでした。ところが作業が進まず、連絡も途絶えがちになります。事務所の使命や方針をまとめた資料も、読み込んでもらえていないと感じました。

デザインは専門外なので、信頼して待つしかないと考えていました。それでも、モヤモヤしたまま進めるのも良くないと判断し、2月初めには依頼を白紙に戻しています。

紹介は断りにくく、止まっても催促しにくいものです。発注する側に比べる材料がなければ、「待つ」以外の選択肢が見えなくなります。


AIのリサーチには、何を渡して何を作らせたのか?

自社の考え方をまとめた資料を渡し、候補の比べ方と面談の質問までを作らせました。

実は紹介の依頼より前、2025年12月に、ChatGPTのdeep research(AIが多数のWebページを自分で検索・読解し、出典付きのレポートにまとめる機能)で依頼先を調べていました。

渡したのは、次の内容を書いた資料です。

項目 内容
事務所の方針 目指す姿と、大事にする価値観(「Smart, Simple, Elegant」)
使ってほしくない表現 電卓・コイン・右肩上がりの矢印・握手
作りたいもの ロゴ、名刺、ブランドガイドライン
予算 30〜50万円

返ってきたレポートは、いきなり業者を並べるものではありませんでした。

  1. 資料を読み解き、デザインの方向性を先に言葉にする
  2. デザイン会社を価格帯で4つの層に分け、自社の予算がどこに当たるかを示す(大手ブランディング会社、有名デザイン事務所、小規模スタジオ、クラウドソーシング=ネット上で仕事を募る仕組み)
  3. 候補を3社に絞り、代替案を1つ添える(スタートアップ向けの定額プランを持つA社、目の前でロゴを作る共創型のB社、会計事務所の実績を持つC社)
  4. 各社の弱点を突く質問と、面談後の決め方を作る

4の質問は、たとえば次のようなものです。

候補 AIが挙げた弱点 面談で聞く質問
A社 提案が1案だけ どう理解して1案に絞るのか。想像を超えた提案の事例はあるか
B社 共創が迷走するおそれ 依頼者が迷走したとき、どう方向を戻したか
C社 小さな案件への本気度 この予算でも経験のある人が関わるか

2026年1月、A社との面談の準備メモには、この質問がそのまま写してありました。デザインが分からない発注者でも、相手の考え方の深さを確かめる手段になりました。


AIで選んだ会社は、紹介と何が違ったのか?

こちらの考え方を理解したうえで、初稿から承認まで止まらずに進みました。

紹介のデザイナー AIの候補から選んだA社
出会い方 知人の紹介。事務所に来訪 AIの候補3社の1つ。料金プランをWebで公開
確かめたこと 特になし(紹介を信頼) 面談で、用意した質問を投げた
進み方 連絡が途絶えがちで、白紙に 2026年3月に初稿、同月に承認
その後 名刺、Web会議の背景、ホームページのデザインまで継続して依頼

途中で事務所名が変わり、ロゴを新しい名前で作り直すことになりましたが、それにも対応してもらえました。初稿を見た時点で、変えてよかったと感じたのを覚えています。


AIの出した候補は、そのまま信じてよいのか?

信じてはいけません。当たりをつけるところまでに使います。

今回のレポートにも、確かめると合わない箇所がありました。

  • 価格帯の表が矛盾していた。 小規模スタジオの価格帯が、上位の有名デザイン事務所より高く書かれていた
  • 個人デザイナーの名前が、裏付けなしに挙がっていた
  • 価格はレポート作成時点のWeb情報だった。 実際の見積もりとは内訳の組み方が違った

もう1つの弱点は、Webに料金や実績を公開している会社に候補が偏ることです。腕が良くても、Webに情報を出していない会社は拾えません。

ただ、発注する側から見ると、これは判断材料にもなります。業者にもよりますが、料金や進め方をWebで明示している会社は、情報の出し方が整っており、組織として動ける体制がある可能性が高い、というのが当事務所の見立てです。


紹介は、使わないほうがよいのか?

使ってかまいません。ただし「紹介してくれた人が、自分で使ったうえで勧めているか」を確かめます。

紹介には、中身の違う2種類があります。

紹介の種類 信頼できる度合い
紹介者が自分で依頼し、満足している相手(例:自分の顧問税理士) 実際の仕事ぶりに裏付けがある
交流会などで知り合っただけの相手 仕事ぶりは、紹介者も知らない

確かめ方は簡単で、紹介してくれた人に「ご自身で依頼したことはありますか」と聞くだけです。依頼したことがあれば、進み方や連絡の早さも聞けます。

後者の紹介は、Webで見つけた会社と条件は変わりません。紹介者との関係があるぶん、止まったときに断りにくいという不利もあります。紹介の候補も、AIが出した候補と同じ質問で比べるのが公平です。


自社で試すなら、何から始めればよいか?

依頼内容と自社の考え方を1枚にまとめ、AIに渡すところからです。

  1. 1枚の資料を作る。 目指す姿、使ってほしくない表現、作りたいもの、予算、期限を書く
  2. AIのリサーチ機能に渡し、候補と比べ方を出させる。 「価格帯ごとの市場の構造」「候補ごとの懸念点」「面談で聞く質問」まで頼む
  3. 候補の会社のサイトを、自分の目で開く。 料金や実績がAIの記述と合っているかを確かめる
  4. 紹介の候補も加え、同じ質問で面談する
  5. 面談後の決め手を、事前に決めておく。 今回は「面談後にどんな印象が残ったか」で決める、としていた

資料を作らずにAIへ聞くと、一般的な「おすすめ業者の一覧」しか返ってきません。AIに自社を説明できるかどうかが、候補の質を左右します。


いつ、どのAIでやった話か?

2025年12月に、ChatGPTのdeep researchで行った話です。

使ったのは軽量版ではない通常のdeep researchです。deep researchは2025年2月に公開された機能で、公開時の発表では、OpenAIのo3というモデルを調べもの向けに調整したもので動いていました。2025年中に土台のモデルが切り替わったという発表は、確認した範囲ではありません。

モデルが変われば、挙がる候補や価格の精度は変わりえます。 一方で、次の点はどのAIを使っても変わりません。

  • 自社の資料が薄ければ、候補の比べ方も薄くなる
  • Webに情報を出していない会社は拾えない
  • 価格や実績は、発注前に自分で確かめる必要がある

NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。オンラインで全国対応しています。

顧問先の事業内容を把握している立場から、できる範囲で顧問先同士のご紹介も行っています。

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参考文献

(2026年9月16日に原典で確認)


よくあるご質問

Q. 無料のAIでも同じことができますか?

A. 候補を挙げるだけなら、多くのAIである程度できます。ただ、Webを自分で調べて出典を付ける機能があるかで、確かめやすさが変わります。出典のない候補は、会社名から自分で調べ直す前提で使ってください。

Q. デザイン以外の外注先でも使えますか?

A. 使えます。当事務所では、商標出願を頼む弁理士も同じようにリサーチで選びました。専門外の分野ほど、面談で聞く質問を用意できることの価値が大きくなります。

Q. 紹介を断るとき、どう伝えればよいですか?

A. 今回は、依頼前の段階の紹介には「別の依頼先に決まった」と早めに伝えました。候補の資料を用意してもらっていたため、手間をかけたことへのお礼を添えています。

Q. AIに自社の資料を渡しても大丈夫ですか?

A. 取引先名や金額など、外に出せない情報は入れずに作ってください。今回渡したのは、事務所の方針と作りたいものだけです。入力した内容が学習に使われない設定になっているかも確認してください。


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佐久間 元気

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佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

公認会計士試験合格後、PwCを経てNOMERA会計事務所を設立。月次の数字を経営判断につなげ、税務・労務・法務・融資までを一つの窓口で整理する体制を設計

税理士登録番号:149427 / 公認会計士登録番号:043719

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