※特定を避けるため、一部の情報・数値を調整しています。(2026年7月時点)
この事例の要点
試算表の完成が約2か月遅れ。期首の違算・費用の計上漏れが決算時にまとめて発覚していた
試算表の完成が約3週間に。決算日の約6週間前に着地を検討できる状態へ。滞留資産 約470万円も内訳を特定して整理
決済手段ごとに入力方法を決める
ルール設定で自動取り込み
連携できないため、データを出力して取り込む
CSVで取り込む
入力マニュアルに沿って自社で入力する
↓ すべて月次で締める ↓
入力された仕訳を事務所側で確認し、修正した内容は資料依頼リストの「修正仕訳」シートに記入して都度戻す。修正の理由が毎月手元に残るため、同じ誤りが繰り返されにくくなる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種/事業モデル | 多店舗の店舗型サービス業(5〜10店舗) |
| 規模 | 年商1億〜3億円 / 従業員50〜100名(アルバイト・派遣含む) |
| 会計ソフト | マネーフォワード(前任は別ソフト) |
| 相談のきっかけ | 毎月の試算表が約2か月遅れで、決算のたびに期首の違算と計上漏れに焦っていた |
| 主な施策 | IT導入補助金を活用した会計ソフトの導入支援/決済手段ごとの連携可否の切り分け/入力マニュアル整備と自社入力への移行/修正仕訳の共有 |
| 成果 | 試算表の完成が約2か月遅れから約3週間に。滞留していた約470万円の資産の内訳を特定し、貸借対照表から落として整理完了 |
この事例の要約(3文)
現金売上が8割・仕訳数が月4,000〜6,000件という伝票の多い店舗型サービス業で、試算表の完成が約2か月遅れ、決算のたびに期首の違算と費用の計上漏れが発覚していた。IT導入補助金を活用して会計ソフトを入れ替え、決済手段ごとに連携可否を切り分けて入力の設計からやり直し、入力マニュアルを整備して自社入力に移行、事務所が仕訳を確認して「修正仕訳」シートで戻す運用に変えた。試算表の完成は約3週間まで早まり、決算日の約6週間前に着地を検討できるようになったうえ、前任から引き継いだ滞留資産 約470万円も内訳を特定して貸借対照表から落とした。
相談前に起きていたこと
決算を迎えるたびに、期首の残高が合わない・費用の計上漏れが見つかる、という状態が続いていた。試算表の完成は約2か月遅れ。店舗数が多く、現金売上が8割を占め、そこに複数の電子決済が重なって伝票量が膨らんでいた。経理は専任者を置かず、家族とアルバイトで回している体制だった。
何が原因だったか
毎月の締めで、決済手段ごとにどう入力するかが決まっていなかったことです。連携できる決済とできない決済が混在したまま運用していたため、入力が追いつかず、ズレの発見が決算まで先送りされていました。
会計ソフトの使い方を知らなかったわけではありません。店舗数が増え、現金に加えて複数の電子決済が重なっていく過程で、以前のやり方が追いつかなくなっていた——というのが実態です。伸びている会社ほど、このズレは大きくなります。
NOMERAが変えたこと
会計ソフトの入れ替えから着手した。当時の「IT導入補助金」(2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更)を活用してマネーフォワードを導入し、申請から実績報告までの手続きと、初期設定・運用設計までを支援した。補助金の活用により、導入にかかる費用の大部分を補助でまかなえている。
次に、現地で決済手段を1つずつ棚卸しして連携可否を切り分けた。連携できるサービスはルール設定で自動取り込み、連携できないPOSレジはデータ出力、アプリ内のクレジット決済はCSV取り込みと、経路ごとに入力方法を決めた。
そのうえで、売上等の入力マニュアルを作成し、月次の入力を自社で行う体制へ移行。入力された仕訳は事務所側で確認し、修正した内容は資料依頼リストの「修正仕訳」シートに記入して都度戻す運用にした。修正の理由が毎月手元に残るため、同じ誤りが繰り返されにくくなる。
過年度から引き継いだ滞留資産も洗い出した。未収入金、仮払金(従業員経費と過払金)、従業員貸付金——合計 約470万円の中身を、どの科目に何が入っているのか一つずつ特定した。
解決したこと(事実)
- 試算表の完成が、約2か月遅れから約3週間になった。 決済手段ごとの入力方法が決まり、月次で仕訳を確認・修正する運用に変わったことで、決算時にまとめてズレを見つける状態ではなくなった。
- 補助金を使って会計ソフトを導入し、補助金の実績報告まで完了した。導入にあたっての初期設定と運用設計まで含めて支援している。
- 経理の入力負担が下がり、決算の締めが前倒しになった。決算日の約6週間前の時点で、決算前検討会の資料(月次推移損益計算書・三期比較損益計算書・資金別貸借対照表・利益計画)を使って着地を検討し、設備投資や納税額の見通しを立てられる状態になった。
- 前任から引き継いだ滞留資産 約470万円について、金額と内訳(何が・いくら・回収できるのか)を特定した。
- 滞留していた約470万円は、最終的に貸借対照表から落として整理を完了した。 ただし回収不能であることの立証が難しく、税務上の損金としては認められにくい部分があるため、有税処理(帳簿上は費用として落とすが、税務上は損金として認められず、申告書で所得に加算し直す処理。税金を払ったうえで落とすのでこう呼ばれる)となった。
- 決算書から実態のない資産が消え、金融機関からの見え方が良くなった。 融資審査では、中身の説明できない仮払金や貸付金は「社外に出たまま戻っていないお金」と見られ、実質的な純資産から差し引いて評価されることがある。説明できる数字だけが並ぶ貸借対照表になったことで、設備投資の資金調達を見据えたときの交渉材料が整った。
- 過去の税金を取り戻せる可能性を、金額で示した。 回収できない未収入金が資産に残っていたということは、その分だけ過去の利益が多く計上され、税金を多く納めていた可能性があるということだ。この金額を算定し、「更正の請求」(過去の申告を訂正して税金の返還を求める手続き。原則として法定申告期限から5年以内)という選択肢を提示した。ただし提出すれば過去の年度を見直されることにもなるため、メリットとリスクを並べて判断してもらう形にした。
- 償却資産税の申告対象に、対象外であるホームページ作成費用が含まれていたことが判明し、申告から除いた。
同じ状況の方へ
貸借対照表の資産の部を、上から順に見ていってください。見るのは仮払金・立替金・未収入金の3つです。月次推移表で12か月分を横に並べ、残高の動きを見ます。
- 1年以上同じ金額のまま動いていない → 滞留しています。中身を特定できるか、税理士に内訳を出してもらってください
- 内訳が出てこない → 前任から引き継いだまま、誰も中身を把握していない可能性があります
- 金額が年々増えている → 毎期何かが積み上がり続けています
あわせて、直近の試算表がいつ完成しているかを月数で確かめてください。 2か月以上遅れているなら、ズレの発見が決算まで先送りされる状態です。
滞留資産は、時間が経つほど回収不能の証拠が残らず、落とすときに税務上のメリットを取りにくくなります。さらに、過去の税金を取り戻す「更正の請求」にも原則として法定申告期限から5年以内という期間があり、これを過ぎると請求できなくなります。早い段階で内訳を特定する意味は、ここにあります。
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この事例に関するFAQ
Q. 前任の税理士との解約は、どのタイミングで進めるのがよいですか? 決算期との関係で引き継ぎの負荷が変わります。契約書に中途解約の条項や違約金の定めがあるかを先に確認し、引き継ぎ資料(総勘定元帳・固定資産台帳・申告書一式)の受領範囲を決めてから進めるのが安全です。
Q. 会計ソフトを変えると、過去のデータはどうなりますか? 過去分は前任のソフトから出力して保存し、新しいソフトには期首残高から入れるのが一般的です。過去の元帳は税務調査で参照するため、出力できる形で必ず手元に残してください。
Q. この補助金は、会計ソフトの導入に使えますか? 対象として登録されているソフトと支援事業者の組み合わせであれば活用できます。なお、従来の「IT導入補助金」は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わり、AI搭載ツールも対象に位置づけられました(制度の骨格は継続)。年度ごとに公募要領・締切・補助率・申請要件が変わるため、導入時点の最新の要領で確認が必要です。
Q. 回収できない売掛金や未収入金は、落とせば税金が減りますか? 帳簿上落とすことと、税務上の損金になることは別です。貸倒損失として損金算入するには回収不能の事実を示す必要があり、古い残高ほど証拠が残っていないため、有税処理(帳簿では落とすが申告書で加算する)になりやすくなります。
Q. 税金が減らないのに、滞留資産を整理する意味はありますか? 金融機関からの見え方が変わります。実態のない資産が載った決算書は資産が水増しされていると見られ、仮払金や貸付金は実質的な純資産から差し引いて評価されることがあります。説明できる数字だけの決算書にしておくほうが、借入の場面では有利です。
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