補助金・助成金を使うときの実務——申請前に決めること、採択後の会計処理

佐久間 元気

佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

補助金・助成金|実務:申請前に決めること・採択後の会計処理

この記事の要点

  • 補助金は原則、交付決定後に発注・支払したものしか対象になりません。先に動くと対象外になります。
  • 補助金は原則として後払いです。採択されても補助対象経費をいったん全額支払い、実績報告と精算を経るまで資金が拘束されます。
  • 補助金は原則として収益に計上して課税対象になりますが、固定資産の取得に充てるものは、圧縮記帳で課税を後の期に繰り延べられる場合があります。
  • 設立初年度で最初の申告がまだの間は納税証明書が出せず、使えない制度(デジタル化・AI導入補助金など)があります。個人で申請して後から法人へ移すなら、持続化補助金などでは事前に事務局の承認を得る手続きが要ります。

補助金の論点と、その期限

この記事で扱うのは、融資との資金使途、持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、交付決定と後払い、受け取ったあとの会計処理の5つです。それぞれが何の制度で、いつ何をするかを先に整理します。

  • 融資との資金使途:補助金と同じ時期に融資も申し込むなら、申請前に、補助金で行う事業の資金と融資で手当てする資金を分けておきます。補助の対象外の経費は、融資でまかなう前提で組み立てます。
  • 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者が販路開拓等に使える補助金です。常時使用する従業員が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下の事業者が対象です。締切は公募回ごとに決まります。
  • デジタル化・AI導入補助金:登録されたIT導入支援事業者と組んで、登録済みのITツールを導入する費用を補助する制度です。令和7年度補正予算の事業から、IT導入補助金が名称を変えました。
  • 交付決定と後払い:発注・支払いは交付決定のあとに行います。補助金は実績報告と精算を経てから入金されるため、それまでは補助対象経費を全額立て替えます。
  • 受け取ったあとの会計処理:補助金は原則として益金になり、税金がかかります。設備などの取得に充てる補助金は、圧縮記帳で課税を後の期に繰り延べられる場合があります。

補助金と融資の資金使途は、なぜ混ぜてはいけないのか?

融資の審査では一般に、借りたお金を何に使い、そこからどう返済の原資を生むかという筋道が重視されます。補助金と同じ時期に融資も申し込む会社では、この筋道がぼやけやすいためです。

融資の申込みでは、今の事業に使う資金と、補助金で始める新規事業の資金を分けて説明します。新規事業はまだ売上がなく、返済の見込みを示しにくいためです。

資金を分けるには、どの経費が補助の対象になるかを先に確かめます。パソコンや電動自転車のような汎用性の高い物品は、どの事業にも使えて政策目的に沿った投資だと説明しにくいため、持続化補助金では対象外経費とされています。

一方、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠のように、ソフトウエアと併せて買うPC・タブレット等を上限付きで対象にする制度もあります。2026年10月時点の制度概要では、上限10万円・補助率2分の1以内です。

補助の対象にならない分は、最初から融資でまかなう前提で資金使途を組み立てます。制度の対象経費は公募回ごとに変わることがあるため、申請する回の公募要領で確かめます。

交付決定前に発注・支払してしまうと、なぜ対象外になるのか?

補助対象になるのは、交付決定日以降に発生し、補助事業期間中に支払いまで終えた経費に限るという原則があるためです。補助事業期間は、交付決定日から公募要領で定める事業実施期限までです。

交付決定前に発注・契約・支払い(前払いを含む)をしたものは、持続化補助金の公募要領などで対象外と明記されています。デジタル化・AI導入補助金でも、交付決定前に契約・発注したITツールは対象になりません。

持続化補助金では、採択のあと見積書などを出して事務局の確認を受け、交付決定通知書が届いてはじめて補助事業を始められます。採択から交付決定までの間は、まだ発注できません。

いま着手しなければならない工事などは、この待ち期間とかみ合わないことがあります。発注も支払いも交付決定が下りてから行うのが基本で、順番は次のとおりです。

  • 見積書だけ先に作って交付申請を出す
  • 交付決定を待つ
  • 交付決定後に発注・支払いを行う

見積書の内訳に不備があると交付決定が遅れるため、実施したい時期から逆算して早めに申請します。

補助金は「後払い」——資金繰りはどう組むか?

交付決定のあと補助対象経費をいったん全額支払い、実績報告と精算を経るまで、その資金は数か月にわたって拘束される前提で組みます。実績報告は事業の終了後に支払いの証拠書類を出す手続き、精算は事務局が補助金額を確定して支払う手続きです。

まず、補助事業期間の立替額と入金時期を並べた資金繰り表を作ります。自己資金で回るなら融資は引かず、足りない分だけを融資で埋めます。

申請するかどうかは、先に決算書などで財務の状況を確かめてから決めます。採択されても、立て替える資金を用意できずに受け取れないことがあるためです。

設立初年度に補助金を使いたいが、納税証明書が出せない場合はどうするか?

デジタル化・AI導入補助金のように法人税の納税証明書を求める制度は、法人の最初の申告が終わるまで申請できません。

法人化の前に、個人事業主として申請する方法もあります。国の補助金では、交付決定後に補助事業の内容を変えるには承認を受けるのが原則です(補助金適正化法第7条)。持続化補助金でも、公募要領で補助事業の承継には事前の承認が要ると定めています。

承認を得ずに法人へ移すと、申請した個人と経費を払った法人が食い違い、補助対象として認められないおそれがあります。引き継ぎの手続きは制度ごとに違うため、法人化を決めた時点で事務局に確認します。

設立初年度の法人として申請したい場合に、当事務所がご提案している方法は次の2つです。

  • 決算期を変更して第1期を早めに終わらせ、その申告を済ませて納税証明書が出る状態を作る
  • 決算期は変えずに、第1期の申告が終わるまで待つ

決算期を前倒しすると、税理士費用と税金が早く発生します。ツールを導入したい時期と、その手間・コストを比べて決めます。

採択後、見積書・支払いはどう扱うか?

見積書は、単価と数量が分かる形まで割って出します。持続化補助金の公募要領では、見積金額に複数の項目が含まれるときは内訳を示すこととされ、「諸経費」など内訳が不明な経費は対象外です。

「一式いくら」では内訳が分からないため、たとえばホームページ制作費なら、ページ数や作業時間ごとの単価に分けて出します。

支払方法にも条件があります。持続化補助金の第20回公募(2026年11月受付開始)の公募要領では、支払いは銀行振込が原則で、クレジット払いは申請する事業者の名義であることが原則です。

代表者や従業員が個人のカードで払った場合は、立替払いとして帳簿等で確認できれば対象になります。条件は次の2つです。

  • 立替払いの処理を帳簿に残すこと
  • カードの引落しが補助事業期間内に終わること
    • 分割払い・リボ払いは、期間内に引落しが終わらないと対象外です

制度によっては支払方法がさらに限られ、分割払いや窓口・ATMからの現金振込を対象外とするものもあります。申請する回の公募要領で確認します。

交付決定額は上限で、補助金額は実際の支払額で確定します。見積金額や内容が変わりそうなときは、変更の手続きが要るかを、分かった時点で事務局に確認します。

支払いの入出金履歴と経費ごとの成果物は、支払いの都度残します。展示会出展のように現地でしか記録できない経費は、その場で写真を撮っていないと実績報告で出せるものがなくなります。

受け取った補助金は、税金がかかるのか?会計処理はどうするか?

法人の場合、補助金は雑収入などの収益に計上し、原則として益金(法人税の計算上の収益)になります。計上する事業年度は、原則として入金日ではなく、補助金を受け取る権利が確定した日の属する事業年度です。

どの通知の日で確定したとみるかは交付の条件によるため、決算期をまたぐときは税理士に確認してください。

ただし、設備などの固定資産の取得に充てる国や地方公共団体の補助金なら、圧縮記帳を選べる場合があります。受け取った期に税金がまとめてかかるのを避け、その後の減価償却を通じて少しずつ課税する仕組みです。

使えるかどうかは、期末までに補助金の返還が不要と確定しているかなどの条件で決まります。

事業内容が採択時の申請とずれてしまったら、どうするか?

採択時の申請内容と実態がずれたまま実績報告に進むと、内容を問われたときに説明しきれないおそれがあります。まず、ずれた部分を計画変更の手続きで吸収できるかを事務局に確かめます。

吸収できなければ、その採択は辞退し、今の事業内容に合う公募回で出し直す選択肢があります。出し直すと入金はさらに先になるため、本格的な支出は次の採択後に回し、それまでは手元資金で賄える範囲に抑えます。

税理士事務所には、どこまで頼めるのか?

補助金の申請書類

官公署に提出する書類の作成は行政書士の業務とされているため(行政書士法)、当事務所では補助金の申請書類の作成そのものはお受けしていません。制度の紹介や事業計画書へのアドバイス、行政書士の紹介など周辺のサポートをどこまでお受けできるかは、お問い合わせください。

雇用関係の助成金の申請書類

雇用関係の助成金は、厚生労働省が雇用保険法などにもとづいて行う制度で、補助金とは別の仕組みです。申請書類の作成や提出の代行は社会保険労務士の独占業務にあたるため、こちらもお受けしていません。

よくある質問(FAQ)

Q. デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を使って会計ソフトを入れ替えた場合、会計処理はどうなりますか?

A. 補助金は雑収入などの収益に計上し、原則として法人税がかかります。ソフトウエアを資産に計上するときは、圧縮記帳を選べることがあります。

クラウドの利用料のように資産に計上しない費用に充てる分は、圧縮記帳の対象になりません。

Q. 補助金はいつ頃入金されますか?

A. 交付決定のあとに事業を実施し、実績報告と精算を経てから入金されるため、採択から入金まで数か月かかる前提で資金繰りを組みます。入金までは、補助金の分の資金を立て替えたままになります。


NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。オンラインで全国対応しています。

補助金は「使えるかどうか」より「資金繰りと会計処理が回るかどうか」で判断が分かれます。自社のケースで実行できるかを確かめたい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在の税理士がいる場合の、セカンドオピニオンとしてのご相談にも対応しています。

▶ 相談する(お問い合わせフォーム)

※本記事は2026年10月時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。個別の取扱いは事実関係により結論が変わるため、実行前に税理士へご確認ください。

関連記事

UPDATE

内容は掲載時点の制度・実務に基づきます。制度改正があった記事は更新日を改めて記載します。
佐久間 元気

AUTHOR

佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

公認会計士試験合格後、PwCを経てNOMERA会計事務所を設立。月次の数字を経営判断につなげ、税務・労務・法務・融資までを一つの窓口で整理する体制を設計

税理士登録番号:149427 / 公認会計士登録番号:043719

POPULAR

よく読まれている記事

初回面談は無料・オンライン対応

現状の課題を整理し、NOMERAで対応できることをご説明します