※特定を避けるため、一部の情報・数値を調整しています。(2026年7月時点)
この事例の要点
法人成りしたが、役員報酬をいくらにするかの根拠がない。マイクロ法人との二刀流も含め、どの形が手残りを最大にするのか分からなかった
月額9万円台+事前確定届出給与475万円で、合算キャッシュフロー約990万円。個人の手取りは設定した上限いっぱいの約480万円、社会保険料の合計は約106万円に収まる形へ
2,000通り超をどう絞り込んだか
月額報酬を標準報酬月額の等級に合わせた56段階、事前確定届出給与を40段階以上に刻む
個人の手取りに下限と上限を設定し、範囲外の組み合わせを先に除外する
個人の手取りと法人の内部留保を足した金額で並べ、上位10案を比較できる形にする
法人所得が−30%から+30%まで動いても、同じ案が有効であり続けるかを確かめる
月額9万円台+事前確定届出給与475万円。合算キャッシュフローは約990万円で、個人の手取りは設定した上限いっぱいの約480万円、社会保険料の合計は約106万円に収まる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種/事業モデル | 受託開発(Webサービス・ソフトウェア開発)。フリーランスから法人成り |
| 規模 | 役員報酬支払前の法人所得 約1,300万円 / 代表1名 |
| 会計ソフト | マネーフォワード |
| 相談のきっかけ | 法人成りしたが、役員報酬をいくらにするか判断の根拠がなかった |
| 主な施策 | 報酬の組み合わせを総当たりで計算/生活費の制約を先に反映/感度分析で変動への強さを検証 |
| 成果 | 合算キャッシュフロー約990万円の組み合わせを特定。個人の手取りは設定した上限いっぱいの約480万円、社会保険料の合計は約106万円 |
この事例の要約(3文)
フリーランスから法人成りしたものの、役員報酬をいくらにすべきかの根拠がなく、マイクロ法人との二刀流も含めてどの形が手元に一番お金が残るのか分からない状態だった。役員報酬支払前の法人所得 約1,300万円を起点に、自社で開発したGAS(Google Apps Script)のシミュレーションツールで、月額報酬を標準報酬月額の等級に合わせた56段階、事前確定届出給与を40段階以上に刻み、その全組み合わせ(2,000通り超)について個人と法人の両方を自動で計算した。生活費から必要な手取りの範囲を先に条件として入れたうえで、合算キャッシュフロー(個人の手取り+法人の内部留保)で順位付けし、さらに法人所得が±30%変動した場合も同じ案が最適であり続けるかを検証して、月額9万円台+事前確定届出給与475万円という組み合わせを選んだ。
相談前に起きていたこと
法人を設立したが、役員報酬をいくらにするかが決まらない。ネット上には「マイクロ法人と個人事業主の二刀流で社会保険料を抑える」「役員報酬は低いほうが得」といった情報があふれているが、自分の所得規模で計算した結果を見たことがない。生活費もあるので、手取りをいくら確保する必要があるかという制約もある。判断材料がないまま、感覚で決めるしかない状態だった。
何が原因だったか
知識ではなく、変数が多すぎて手計算では比べられないこと。月額報酬を1万円動かすだけで、社会保険料の等級が変わり、所得税と住民税が変わり、法人の損金が変わり、法人税が変わる。事前確定届出給与を加えると、標準賞与額の上限(健康保険は年間の累計、厚生年金は1回あたり)も絡む。組み合わせは数千通りあり、しかもそれぞれで個人と法人の両方を計算しないと手残りが出ない。
NOMERAが変えたこと
組み合わせを総当たりで計算した。 NOMERAでは、この計算を行うシミュレーションツールを自社で開発している。スプレッドシート上で動くGAS(Google Apps Script)で、月額報酬を標準報酬月額の等級に合わせた56段階、事前確定届出給与を40段階以上に刻み、その全組み合わせについて個人と法人の両方を自動で計算する。それぞれで社会保険料(個人負担・法人負担)、所得税、住民税、法人税を求め、個人の手取りと法人の内部留保を足した「合算キャッシュフロー」で順位を出す。手計算では現実的でない量を、仕組みで処理している。
生活費の制約を先に入れた。 合算キャッシュフローだけを追うと、生活が成り立たない報酬水準が最適解になってしまう。そこで個人の手取りの下限と上限を先に条件として設定し、その範囲に入らない組み合わせは対象から外した。今回は下限を年360万円、上限を年480万円として計算している。
感度分析で変動への強さを確認した。 最適解は、前提にした法人所得の上でだけ最適な可能性がある。そこで法人所得を−30%から+30%まで動かし、同じ案が有効であり続けるかを検証した。事業が計画どおりに伸びなかった場合、逆に想定以上に伸びた場合の両方で、手残りがどう変わるかを見ている。
制度の前提も明示した。 保険料率(健康保険、介護保険、厚生年金、子ども・子育て支援金、子ども・子育て拠出金)、標準報酬月額の等級表、所得税の速算表、法人税の実効税率、基礎控除と給与所得控除の改正内容——計算に使った前提をすべて表に出し、料率が変われば引き直せる形にした。
解決したこと(事実)
- 自社開発のシミュレーションツールで、手計算では不可能な量を処理できた。 GASで全組み合わせを自動計算し、上位10案と感度分析を自動で出力する。料率や税制が改正されたときは前提を入れ替えて引き直せる。
- 報酬の組み合わせを、数字の根拠つきで決められた。 月額9万円台+事前確定届出給与475万円という組み合わせで、合算キャッシュフローは約990万円。
- 生活費と手残りの両立を確認できた。 個人の手取りは、先に設定した上限(年480万円)いっぱいの約480万円。社会保険料の合計(個人負担+法人負担)は約106万円に収まる。
- 上位10案を並べて比較できた。 最適解の1つだけでなく上位を並べたことで、合算キャッシュフローの差がわずかな案どうしの違い(月額を上げて賞与を下げる/その逆)を見比べたうえで選べた。
- 前提が変わっても引き直せる形にした。 法人所得が±30%変動した場合の結果を併記し、保険料率や税制が改正されたときに再計算できるよう前提を明示した。
現在進行中の取り組み(2026年7月時点)
- 取引先との契約を法人名義へ切り替える作業を、更新のタイミングに合わせて進めている。
- 創業融資の検討。個人事業主としての期間を含めて創業から一定年数以内であれば対象になるため、資金繰り表と事業計画をあわせて準備している。
同じ状況の方へ
役員報酬をこれから決めるなら、確認してほしいことが2つあります。提示された報酬額について、なぜその金額なのかを説明してもらえますか。 そしてその案は、利益が想定より3割落ちても最適なままですか。 前者に答えがなければ根拠なく決めていることになり、後者を確かめていなければ、計画どおりに進んだ場合にしか通用しない案ということになります。
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この事例に関するFAQ
Q. 役員報酬は低いほうが得ではないのですか? 低くすると社会保険料と所得税は下がりますが、その分だけ法人の利益が増えて法人税が増えます。どこで釣り合うかは所得規模によって変わるため、個人と法人を合わせた手残りで比べないと判断できません。加えて、報酬を下げすぎると生活費が足りず、結局は会社から借りることになります。
Q. 事前確定届出給与を組み合わせると、なぜ有利になることがあるのですか? 社会保険料の計算に使う標準賞与額には上限があるためです(健康保険は年間の累計、厚生年金は1回あたり)。ただし届け出た日に届け出た金額を実際に支払う必要があり、ずれると全額が損金になりません。支給日に資金があるかを先に確かめることが前提です。
Q. 感度分析は必ず必要ですか? 最適解は前提とした利益額の上での話なので、利益が動けば最適解も動きます。とくに創業期は利益の振れ幅が大きいため、下振れした場合にも成り立つ案を選ぶほうが安全です。上振れ時と下振れ時で結論が変わるなら、その事実を知ったうえで決めるべきです。
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