税理士のAI活用で、顧問先に何が届くのか——作業を減らした分、月次レポートと解説動画を毎月お渡ししています

佐久間 元気

佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

税理士のAI活用で、顧問先に何が届くのか——作業を減らした分、月次レポートと解説動画を毎月お渡ししています

この記事の要点

NOMERA会計事務所では、帳簿のチェックと分析資料の下書きをAIに任せ、減った作業の分を顧問先にお渡しするものに回しています。2026年1月までは月次の資料を作らず、面談で数字を口頭で説明するだけでした。

いまは帳簿がそろった顧問先に、グラフ入りの月次レポートと10分前後の解説動画を毎月お届けしています。決算時の金融機関向け資料や、補助金の申請書の添削も顧問料の範囲内です。

AIの出力は、そのままお渡ししていません。税理士が数字と言い回しを確認してからお届けしています。


AIに任せた作業と、人に残した判断
AI
作業
帳簿の一次チェック
グラフと表の作成
レポートの下書き
動画の読み上げ
税理士・担当者
判断
数字がおかしくないか
会社の事情に合っているか
言い方が適切か
顧問先
毎月届くもの
月次レポート(PDF)
解説動画
決算時の金融機関向け資料

会計事務所は、AIで何を減らしたのですか?

減らしたのは、帳簿を読む作業と、資料の形を作る作業です。

月次の業務には、性格の違う2つの作業があります。

作業 中身 AIに任せた部分
月次チェック 仕訳の誤り、計上漏れ、領収書の添付漏れなどを確かめる 全件を読み、確認が必要な取引に印を付ける
月次分析 帳簿を読み、社長に「儲かっているか」「お金は足りるか」を伝える グラフ・表・文章の下書き、動画の読み上げ

月次チェックは、依頼から約10分で、確認が必要な取引の一覧までAIが作ります。担当者は、その一覧と帳簿を見て判断します。月次分析は、帳簿のデータを渡してから15分ほどで、レポートの初版が出てきます。

AIを使う前は、月次の資料そのものを作っていませんでした。数字は面談の場で口頭で説明し、顧問先の手元には残りませんでした。


減らした分、顧問先には何が届くのですか?

毎月の月次レポートと解説動画です。決算時には、金融機関に出す資料のたたき台もお付けします。

お届けするもの 中身 時期
月次レポート(PDF) 今月の結論、累計の業績、資金繰り、年間の着地と納税の見込み、節税の検討項目、用語の解説 毎月
解説動画 レポートの内容をスライドと音声で説明する。10分前後 毎月
決算分析と金融機関向け資料 3期の推移、来期の計画。金融機関向けは社長が確認・修正してから出すたたき台 決算時
個別の支援 補助金の申請書や融資の計画書の添削、資金繰りの相談 必要なとき

これらは顧問料の範囲内で提供しています(2026年9月時点)。以前は、融資の計画書の添削のように、別料金をいただかないと時間を取れなかった支援も含まれます。顧問先ごとの要望に合わせて分析の中身を作り込む場合は、別途のご相談になります。

レポートは、社長が自分の会社の状態をつかめるように書いています。たとえば「現預金は月商の約3.4か月分」ではなく、「売上がゼロになっても3か月半は会社が回るお金」と言い換えます。

事例:月次レポートで、判断の基準を数字で示した(ITサービス業)

月次の数字を受け取っても、それが多いのか少ないのか判断できない状態でした。毎月の固定費を積み上げて「安全ライン」を約320万円と算出し、現預金がその3倍以上あることを示しました。営業利益率の目標も、根拠を添えて15%と置いています。

詳しくは事例ページ


AIが作った資料を、そのまま渡してはいないのですか?

渡していません。AIの出力は、中身が間違っていても整った文章で出てくるため、税理士が確認してからお届けしています。

実際に確認で止めた誤りには、次のようなものがあります。

  • 会計ソフトから書き出した帳簿に、まだ入金されていない予定の仕訳が混ざっていた。AIはそれを入金として読み、預金を実際の約20倍と書いていた
  • 事務所が顧問先と組んだ役員報酬の設計を、AIが「要注意」と警告していた
  • まだ締めていない月の帳簿を見て、「3か月未回収」と断定していた

どれも、帳簿の仕組みや顧問先の事情を知っていれば気づけます。知らなければ、正しい文章として通ってしまいます。確認の手間は、AIを使う前より減っていません。代表は、毎月の解説動画をそのまま見て確認しています。

提案の中身も、会社の実態に合わせて調整します。たとえばAIは、ある会社に「出張の旅費規程を整備する」ことを勧めていました。実際にはその会社では規程をすでに作り、出張手当も支給していたため、提案から外しています。AIに移したのは作業で、判断は人に残しています。


空いた時間は、何に使っているのですか?

主に、レポートの精度を上げることと、顧問先が使いやすい形に直すことに使っています。

実物をお渡しするたびに出た指摘を、次の月から全顧問先の作り方に反映してきました。

直したこと きっかけ
分からない点は、資料を作る前に担当者へ質問する 資料の中に「確認事項」を並べても、顧問先の手間が増えるだけだった
分析の前に、面談の議事録とチャットのやり取りを読む 議事録で答えが出ていることを聞き直す、一度見送った提案をまた出す、といったことが起きた
使った専門用語だけを、レポートの末尾で解説する 「専門用語がいきなり出てくる」
補助金は「こういう制度もあります」の温度で書く 会社の予定と関係のない制度まで勧めていた
帳簿の計上時期のずれを先に確かめる 入金のタイミングで計上された帳簿では、月ごとの黒字・赤字に意味がない

どれも、作業時間が減ったから手を付けられた改善です。


顧問先にとって、何が変わりましたか?

数字の説明が、いつでも見返せる形で手元に残るようになりました。

顧問先からは「わかりやすい」という声を多くいただいています。面談で解説動画を流したときは、「すごいですね。これAIが喋ってんだね」という反応でした。「面談はそんなに頻繁でなくてよいので、月次分析のような資料を毎月ほしい」というご要望もあります。

面談の時間の使い方も変わりました。以前は、面談1回に準備を含めて1時間半ほどかかり、その多くが数字の説明でした。いまは数字の説明を動画とレポートに任せ、面談では来期の計画や資金の使い方など、判断が必要な話に時間を使っています。

資料には毎回、「顧問契約に含まれる経営サポートとしてお届けしている」「確定前の速報値である」と注記しています。契約時に一度説明するだけでは、位置づけが伝わり続けないためです。


いつ、どのAIを使った話ですか?

2026年1月から9月までの取り組みです。AIはAnthropic社のClaudeを、その時点で最も性能の高いモデルで使ってきました。2026年7月24日に公開されたClaude Opus 5を、8月以降の分析で使っています。それ以前のモデル名は、実行ごとには記録していません。

会計ソフトはマネーフォワード クラウド会計です。AIが帳簿を直接読み取れる連携機能(MCPサーバー)を使っています。

モデルが変われば、文章の癖や間違え方は変わります。一方で、次の2つは道具が変わっても残る仕組みです。

  • 確認が必要な点は、資料を作る前に担当者に質問する
  • 税理士が確認してからお渡しする

税理士を選ぶとき、どこを確かめればよいですか?

いまの税理士から毎月何を受け取っているかを、手元の資料で確かめてください。

確かめること 見るもの 注意したい状態
数字の説明が手元に残っているか 過去3か月に受け取った資料 試算表だけで、説明は面談の口頭のみ
資金と納税の見通しがあるか 同上 年間の着地や納税額の見込みが一度も出ていない
AIの出力を誰が確認しているか 税理士への質問 「AIで作っています」だけで、確認の体制が分からない

顧問料は、事業の内容と記帳の体制で変わるため、個別のお見積りです。


NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。オンラインで全国対応しています。

顧問契約の範囲内で、経理まわりの手作業を減らす仕組みづくりのご相談も承っています。業種や規模によってできることは変わりますが、毎月の数字を資料と動画でお届けする体制も、その一つです。

この記事の内容が自社に当てはまるかを確かめたい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在の税理士がいる場合の、セカンドオピニオンとしてのご相談にも対応しています。

相談する(お問い合わせフォーム)

参考文献

(2026年9月17日に原典で確認)


よくあるご質問

Q. AIで作った資料は、間違っていることはありませんか?

A. AIの出力には誤りが含まれることがあります。そのため、税理士と担当者が数字と言い回しを確認してからお渡ししています。確認の手間はAIを使う前より減っておらず、そこに時間を使う前提で体制を組んでいます。

Q. 月次レポートは、どの顧問先にも届きますか?

A. 帳簿がそろっていることが前提です。仕訳が月内にそろわない場合、分析しても実態とずれるため、まず毎月の記帳の流れを整えるところからご一緒します。

Q. 解説動画の音声もAIですか?

A. はい。AIの音声で、スライドに書いてあることを読み上げています。読み間違えやすい固有名詞は読み上げず、画面の表記で示しています。

Q. 自社の経理データがAIの学習に使われることはありませんか?

A. 新たにご契約いただく際は、AIを使う業務とデータの取扱いについて契約書に定め、あわせてご説明します。


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佐久間 元気

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佐久間 元気

代表 / 税理士・公認会計士

公認会計士試験合格後、PwCを経てNOMERA会計事務所を設立。月次の数字を経営判断につなげ、税務・労務・法務・融資までを一つの窓口で整理する体制を設計

税理士登録番号:149427 / 公認会計士登録番号:043719

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