※特定を避けるため、一部の情報・数値を調整しています。(2026年7月時点)
この事例の要点
月次の試算表は出ていたが、「いくら現金があれば安全か」「利益率は何%を目指すべきか」の基準がなかった
現預金が安全ラインの3倍以上と分かり、仕入や投資の判断ができる状態に。外注中心から自社で回す体制への構造変化も利益の変化として捉えられた
2つの基準を積み上げで算出する
月次の固定支出(役員報酬・給料賃金・法定福利費・外注費の固定分・地代家賃・通信費等)と月次の借入返済を合計し、2ヶ月分で算出
借入返済を賄える最低ライン13.3%、CF返済充当率基準17.9%、前期からの改善目標——3つの間を取って設定
役員報酬控除前の「事業利益」を通常の営業利益と並べて表示。少人数の会社では役員報酬が利益の分配を兼ねるため、事業の稼ぐ力を別に見える化した(税務・金融機関向けには通常の営業利益を使用)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種/事業モデル | ITサービス業(SES・RPA導入支援、クラウド導入支援)+不動産賃貸 |
| 規模 | 年商3,000万〜4,000万円/役員・従業員あわせて数名 |
| 会計ソフト | マネーフォワード |
| 相談のきっかけ | 月次の数字は見ていたが、仕入や投資の判断に使える形になっていなかった |
| 主な施策 | 安全ラインと利益率目標を積み上げで算出/事業利益の併記 |
| 成果 | 外注中心から自社で回す体制への構造変化を捉え、売上が減っても営業利益が大きく伸びたことを確認 |
この事例の要約(3文)
月次の試算表は出ていたものの、「手元にいくら現金があれば安全か」「利益率は何%を目指すべきか」という判断の基準がなく、仕入の量や投資の可否を数字で決められない状態だった。
毎月の固定支出と借入返済を積み上げて安全ライン約320万円を算出し、借入返済を賄える最低ライン・キャッシュフローの返済充当率・前期からの改善目標の3つから営業利益率15%の目標を導出した。
基準ができたことで、外注中心から自社の人員で回す体制へと変わった構造変化が、利益にどう表れたかを月次で確認できるようになった。
相談前に起きていたこと
月次の試算表は毎月届いていた。しかし、在庫をどれだけ仕入れてよいのか、不動産を購入しても資金繰りが持つのか、という判断には使えなかった。
前月比や前年比は分かっても、自社にとっての基準値がないからだ。加えて、少人数の会社では役員報酬が利益の分配を兼ねるため、通常の営業利益率だけを見ても事業そのものの稼ぐ力が見えない。
何が原因だったか
月次資料が「何が起きたか」しか示しておらず、「どこを目指すべきか」を示していなかったことです。一般的な月次報告は前月比・予算比を並べますが、その会社にとっての安全値や目標値は示しません。基準がなければ、数字を見ても判断にはつながりません。
NOMERAが変えたこと
① 安全ラインを積み上げで算出した。 「売上がゼロになっても2ヶ月は会社を維持できる最低限の預金額」と定義し、根拠を全部見せた。
月次の固定支出(役員報酬・給料賃金・法定福利費・外注費の固定分・地代家賃・通信費等)と、月次の借入返済を合計し、それを2ヶ月分で見て約320万円。項目別の金額を並べて示しているので、固定費が変われば安全ラインも自分で引き直せる。
② 営業利益率15%の目標を、3つの客観的根拠から導出した。 「なんとなく15%」ではないことを示すため、下記を並べた。借入返済を賄える最低ライン=13.3%(年間返済額-減価償却費=必要営業利益、を年間換算売上で割ったもの)。これを下回ると、返済のために預金を取り崩す状態になる。
キャッシュフローの返済充当率80%未満=17.9%(企業財務診断の基準を利益率に換算)。前期からの改善目標(前期の実質営業利益率からの引き上げを提言していたため)。この3つの間を取って「返済を賄った上で、会社に利益を蓄積できる水準」として15%を置いた。
③ 役員報酬控除前の「事業利益」を併記した。 少人数の会社では役員報酬が利益の分配を兼ねるため、報酬込みの営業利益率だけでは事業の稼ぐ力が見えない。両方を並べ、税務・金融機関向けには通常の営業利益を使うことも注記している。
解決したこと(事実)
- 手元資金を判断に使える形にした。 現預金が安全ラインの3倍以上と分かり、仕入の量や不動産購入の可否を数字で検討できるようになった。
- 利益率の目標に根拠ができた。 13.3%/15%/17.9%の3段階を示すことで、実績がどの水準にあるのかを毎月判定できる。
- 構造変化を数字で捉えられた。 外注に依存していた体制から、自社の人員で回す体制へと変わった結果、売上は前期より減ったにもかかわらず、営業利益は大きく伸びた。「売上の量から質への転換」を数字で確認できた。
現在進行中の取り組み(2026年7月時点)
- レポートの重点を資金繰り表寄りに移す改良を進めている。「どれくらいの仕入れが安全ラインか」「不動産購入によるキャッシュフローの悪化をどこまで許容できるか」を予測で示してほしい、という要望を受けている。運転資金の借り換えタイミングも含めて検討中。
- 仕入の支払サイクルが2ヶ月ずれる取引について、毎月仕入を買掛金で計上し支払時に消し込む処理への切り替えを進めている。反映しないと、その月の利益が実際より多く見えてしまうため。
同じ状況の方へ
月次の数字を受け取っていても判断に使えていないなら、2つ確かめてください。売上がゼロになっても会社が持つ預金額を、金額で答えられますか。 そして営業利益率の目標値と、その根拠を説明してもらえますか。 どちらも積み上げで計算できるもので、基準があって初めて月次の数字が判断に使えます。
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この事例に関するFAQ
Q. 安全ラインはなぜ2ヶ月分なのですか? 売上が止まってから新しい受注が入金になるまでのリードタイムを見た目安です。回収サイクルが長い事業や、取引先が少なく1社失うと売上が大きく落ちる会社は、3ヶ月以上を見ることもあります。
Q. 役員報酬を控除した利益を見るのは、都合のよい見方ではありませんか? 税務や金融機関向けには、報酬込みの通常の営業利益を使います。事業利益はあくまで経営判断のための参考指標です。両方を並べて見ることが大切で、片方だけを使うと判断を誤ります。
Q. 目標利益率は業界平均を使えばよいのでは? 業界平均は参考になりますが、自社の借入返済額を賄えるかどうかは別問題です。返済額と減価償却費から逆算した水準のほうが、自社の実態に合った目標になります。
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