この記事の要点
- 決算対策の面談日は、決算日からではなく、動かせる制度の期限から逆算して決めます。目安は決算月の2か月前の月初です。
- 役員報酬の改定は原則として事業年度開始から3か月以内で、決算の2か月前には通常動かせません。
- 残る手は、経営セーフティ共済の前納、少額減価償却資産の発注、貸倒引当金の繰入、期ズレの確認などです。前納の申出には、前納を始める月の5日までという期限があります。
決算の2か月前に残っている手と、その期限
決算の2か月前に検討する手は、次の6つです。それぞれが何の制度で、いつまでに動く必要があるかを先に整理します。
- 役員報酬の改定:毎月同額で払う役員報酬(定期同額給与)を変えられるのは、原則として事業年度開始から3か月以内です。
- 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済):取引先が倒産したときに、掛金総額の10倍(最高8,000万円)まで無担保で借りられる中小機構の共済です。掛金は法人なら損金(法人税の計算で利益から差し引ける費用)になり、1年分まで前納できます。
- 少額減価償却資産と一括償却資産:取得価額40万円未満の資産を当期に全額損金にできる特例(年300万円まで)と、20万円未満の資産を3年で均等に損金にする制度です。決算月までに取得し、事業に使い始める必要があります。
- 貸倒引当金:売掛金などが回収できなくなる見込み額を、決算のときに費用として繰り入れておく仕組みです。
- 計上時期のずれ(期ズレ):経費を支払日ではなく、役務が完了した日で計上できているかの確認です。
- 決算期の変更:定款を変えて決算期を手前で区切る方法です。売上を翌期に送れる場合がありますが、翌期の納税がその分増えます。
決算対策の面談は、いつ入れるべきか?
決算日からではなく、動かせる制度の期限から逆算して決めます。目安は決算月の2か月前の月初です。
理由は、経営セーフティ共済の前納の申出に、前納を始める月の5日までという期限があることです。決算月に引き落として当期の損金にするなら、決算月の5日が申出の期限になります。
面談までに、その時点で締められる月までの試算表を確定させておきます。試算表は、その月までの取引をすべて帳簿に入れ、各勘定の残高と損益を一覧にしたものです。
残りの月は見込みで計算して納税予測を出し、前納するかどうかもその場で検討します。
決算月の2〜3か月前に、何を確定させる必要があるか?
締められた月までの試算表に、残り期間の見込みを足して着地額を出します。面談でその場で概算を出すときの目安は、次の2本です。
- 法人税等:税引前の利益のうち、所得800万円以下の部分に約21〜23%、超える部分に約34%を掛け、住民税の均等割を足します。
- この率は、2026年10月時点の標準税率で、資本金1億円以下の会社が東京都にある場合の目安です。
- 例:税引前の利益1,000万円なら、800万円×約21〜23%+200万円×約34%で約236万〜252万円、これに均等割を足します。
- 交際費など損金にならない費用があれば、税務上の所得はその分大きくなります。超過税率がかかる地域・規模では、やや上がります。
- 消費税:原則課税なら、売上の消費税から仕入れ・経費の消費税を差し引きます。簡易課税なら、売上の消費税からみなし仕入率の分を差し引きます。
- 例:税抜売上1,000万円・税率10%のサービス業(第五種・みなし仕入率50%)で簡易課税なら、100万円−50万円で50万円です。
- 2割特例を使える会社は、売上の消費税×20%です。法人で使えるのは令和8年9月30日を含む課税期間までです。
概算の前に、目の前の決算をどの計算方法で出すかを確認します。この概算は、まだ計上していない現金領収書や決算月の経費でぶれる前提です。簡易課税の会社では、経費を積んで赤字になっても、消費税は売上側だけで決まり減りません。
役員報酬の改定は、もう間に合わないのか?
決算の2か月前という時点では、通常すでに間に合いません。定期同額給与の改定は、原則として事業年度開始から3か月以内に限られます。役員の職務内容の重大な変更や、経営状況の著しい悪化による減額など、やむを得ない事情があるときだけ、期中の改定が例外的に認められます。
事前確定届出給与の届出期限も、原則は期首から4か月以内です(総会決議から1か月のほうが早ければそちら)。
期限を過ぎてから遡って支給額を変えても、差額は定期同額給与にあたらず損金になりません。
役員報酬の決め方は「役員報酬と事前確定届出給与をいくらにするか」(関連記事参照)で扱っています。
経営セーフティ共済の前納は、いつまでに動けば間に合うか?
検討と準備は、決算月の1〜2か月前に始めるのが目安です。前納の申出書は、前納を始める月の5日(土日祝日にあたるときは翌営業日)までに中小機構へ届いている必要があり、オンライン手続きなら5日の24時までです。
着地利益を見るタイミングは、期末の2〜3か月前が目安です。手順は次の順番で進めます。
- 設備投資分の減価償却まで織り込んで、着地利益を出す
- 残った利益を前納で吸収する
- それでも残る分は、予定していた設備購入の前倒しなどで調整する
減価償却を入れる前の利益だけを見て前納額を決めると、必要以上に前納して赤字にし、現金だけが先に出ていきます。節税のためだけに不要な設備を買うのも、減る税額より出ていく現金のほうが大きくなります。
前納した掛金の計上のしかた
前納した掛金は、費用として計上するほか、「保険積立金」として資産に計上し、法人税の申告書(別表)で所得から差し引く形も選べます。どちらも、申告書に掛金の損金算入に関する明細書を添付することが要件です。資産に計上する形なら、営業利益も純資産も減らさずに課税所得だけを圧縮できます。
加入の要件と、前納できる額
加入できるのは、1年以上続けて事業を行っている中小企業者です。令和6年10月1日以降に解約して再加入した場合、解約から2年を経過する日までに支払う掛金は損金になりません。
掛金は月5,000円〜20万円で、1年分を前納すれば最大240万円をまとめて損金にできます。ただし積立総額は800万円が上限で、納付が40か月未満で解約すると、解約手当金は掛金総額を下回ります。
損金になるのは掛金を支払った期です。資金繰りとあわせて、決算前に着地を試算してから入金します。
初めて加入した会社は、加入から12か月が経ち、掛金を12か月分以上納めるまで一時貸付を申し込めません。初年度に前納しても、資金が戻るのは翌期以降です。
少額減価償却資産や固定資産は、期末にどう判断するか?
決算対策として見るなら、取得の時期より1単位あたりの金額のほうが効きます。特例の範囲内なら期末に取得しても全額を損金にできますが、それを超える資産は使い始めた月からの月割り分しか落とせず、期末間際では1〜2か月分にとどまります。
少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている中小企業者等が、取得価額40万円未満の資産を一度に損金にできる制度です。令和8年3月31日以前に取得した分は、30万円未満で判定します。
中小企業者等は、資本金1億円以下の法人などで、常時使用する従業員数が400人以下(令和8年3月31日以前の取得は500人以下)などの要件を満たす会社です。
金額は通常1単位として取引される単位ごとに判定し、一体で機能する設備は発注を分けても合計額で判定します。年300万円の上限があるため、他の工具・消耗品とあわせて枠の残りを見ながら発注順を決めます。
一括償却資産との選び方
一括償却資産は、取得価額20万円未満の資産を3年で均等に損金にする制度です。少額減価償却資産とどちらを使うかは、申告のときに決めても間に合います。どちらも、決算で費用に計上する「損金経理」と、申告書への記載・明細の添付が要件です。
決算では取得価額の全額を費用に計上しておきます。一括償却資産を選ぶなら、当期に損金にできるのは3分の1(12か月の事業年度の場合)までなので、超える分を申告書で加算し、翌期以降に損金にします。
もう一つの違いは償却資産税です。機械や備品など事業用の資産にかかる固定資産税で、少額減価償却資産で落としたものは課税対象に残り、一括償却資産は対象から外れます。
償却資産の合計が市区町村ごとに150万円未満なら免税点にかかり、税額は生じません。まとまった設備投資の予定があるなら、少額側に寄せると150万円のラインを早く超える点に注意します。
車両など納車時期をずらせるものは、期の前半に入るよう調整します。償却は使い始めた月からの月数按分になるため、期末直前の納車では当期に落とせる額がごくわずかになります。
貸倒引当金の繰入は、決算前に何を確認するか?
期末に売掛金が残っているなら、繰入限度額まで繰り入れているかを決算前に確認します。
資本金1億円以下の中小法人等は、期末の売掛金などの残高にまとめて率を掛ける「一括評価」で貸倒引当金を繰り入れ、損金にできます。大法人の完全子会社などは対象外です。
繰入限度額は、期末の売掛金などの残高に、貸倒実績率と法定繰入率の有利なほうを掛けて出します。貸倒実績率は過去3年の貸倒れの実績から出す率で、法定繰入率はその他の事業なら1,000分の6です。
法定繰入率を使うときは、同じ相手への買掛金など、実質的に債権とみられない額を除いて計算します。売掛金1,000万円で控除がなければ、繰入限度額は6万円程度です。
繰り入れた額は翌期に全額を益金に戻すため、効果は課税所得を翌期に繰り延べることで、税金が恒久的に減るわけではありません。利益の出る期ほど効果が大きくなります。
計上時期がずれた経費(期ズレ)は、決算前にどう直すか?
支払日ではなく、役務が完了した日で計上できているかを、決算前に1件ずつ確認します。
振込が翌月にずれていても、業務が期内に完了して金額も合理的に算定できる状態なら、当期の未払金(未払外注費)として計上できます。期末までに債務が確定していることが条件です。
月次の段階で「完了予定◯月」というメモを仕訳の摘要に残しておき、決算前の面談で1件ずつ確認すると、計上時期のずれを申告前に直せます。
受託開発など期をまたぐ案件では、検収(発注者が納品物を確認して受け入れること)が期末の直前に寄ると、入金がまだでも売上と利益だけが期内に立ち、納税が先行します。
案件ごとの検収予定を毎月確認し、どの期の売上になるかを決算の数か月前から押さえておきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 決算対策の面談は年に1回で足りますか?
A. 決算月の2か月前だけでなく、期の半ばなど別の時期にもう一度、着地見込みを見る面談を置くと、選択肢が残った状態で調整できます。毎月の数字が正確であれば、面談の回数を増やすより月次資料に納税シミュレーションを載せる形に寄せていく方法もあります。
Q. 役員報酬の改定期限をもう過ぎていたら、打てる手はもうないのですか?
A. 役員報酬そのものは通常動かせませんが、経営セーフティ共済の前納、少額減価償却資産の発注順、貸倒引当金の繰入といった手は残っています。前納の申出には、前納を始める月の5日までという期限があります。
Q. 決算期の変更は決算対策として有効ですか?
A. 売上を翌期に繰り延べるだけで翌期の納税がその分増えるため、資金が持つなら変えないほうがよい場合が多いです。変更には定款の変更と、税務署等への届出が必要です。
また変更前の期間は1年未満の事業年度として別に申告が必要になり、軽減税率の対象となる所得の枠なども月数で按分されます。
まず納税額と入金予定を並べて、決算期を変えなくても納税資金が持つかを確認します。
NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。オンラインで全国対応しています。
決算対策は、決算日ではなく制度ごとの期限から逆算して動く必要があります。自社の決算月から今どの手が残っているかを確かめたい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在の税理士がいる場合の、セカンドオピニオンとしてのご相談にも対応しています。
※本記事は2026年10月時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。個別の取扱いは事実関係により結論が変わるため、実行前に税理士へご確認ください。




