この記事の要点
- 消費税は、売上にかかる消費税から、仕入れや経費にかかる消費税を差し引いて計算します。給与・役員報酬・社会保険料は差し引けないため、利益が薄くても納税額は大きく出ます。
- 免税期間の売上に消費税はかかりませんが、課税事業者になった日からは、同じ価格のままでも売上に含まれる消費税分を納めます。免税のうちから納税額を見込み、その分の現金を残しておきます。
- 中間納付は前期の実績をもとに発生するため、通常の新設法人であれば1期目には生じません。決算日の置き方で、始まる時期を後ろにずらせます。
- 納税資金は、月次の試算表から納税見込み額をつかみ、納付月の資金繰りに織り込んでおくのが基本です。手元の資金を使ってしまいやすい会社では、見込み額を別口座に移す方法もあります。
納税資金に関わる論点と、その期限
この記事で扱うのは、消費税の計算、インボイスの経過措置、免税から課税事業者への切り替え、中間納付、消費税の還付、源泉所得税の納期の特例の6つです。それぞれが何の制度で、いつお金が出ていくかを先に整理します。
- 消費税の計算:原則は、売上の消費税から、仕入れや経費(課税仕入れ)の消費税を実額で差し引いて納めます。法人の申告・納付の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
- インボイスの経過措置:登録をしていない相手への支払でも、消費税の一部を差し引ける措置です。差し引ける割合は令和8年10月から令和10年9月までが70%で、その後も段階的に下がります。
- 免税から課税事業者への切り替え:資本金1,000万円未満の新設法人は、原則として最初の2期は免税です。インボイス登録をすると、登録日から課税事業者になります。
- 中間納付:前期の税額が一定額を超えると、期の途中で前払いする仕組みです。年1回の場合は、期首から6か月を経過した日から2か月以内に納めます。
- 消費税の還付:仕入れや経費の消費税が売上の消費税を上回ると、差額が戻ります。戻るのは課税事業者として申告した場合で、免税事業者には戻りません。
- 源泉所得税の納期の特例:給与の支給人員が常時10人未満の会社が承認を受けると、源泉所得税を年2回にまとめて納められます。期限は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日で、土日祝日にあたるときは翌営業日です。
なぜ「経費を増やしても消費税は法人税のようには減らない」のか?
消費税が、利益ではなく取引にかかる税だからです。
法人税は利益にかかるため、経費を増やせば税額は下がります。消費税は売上の消費税から課税仕入れの消費税を差し引いて計算し、外注費は課税仕入れになりますが、給与・役員報酬・社会保険料はなりません。
この3つの支払いが多い会社ほど、利益がほとんど残っていなくても、消費税の納税額は大きく出ます。
実際に、赤字の見込みで法人税はかからず、住民税の均等割7万円だけなのに、消費税の予測額はその十数倍という会社もありました。
支払先がインボイス登録をしていなければ、その外注費の消費税は経過措置による一部しか控除できません。経過措置を受けるには、帳簿に対象である旨を書き、相手の請求書等を保存しておきます。
令和8年10月1日から令和10年9月30日までの課税仕入れは控除が70%のため、未登録先への支払額の約2.7%がそのまま納税増になります。支払額に含まれる消費税(支払額×10/110)のうち、控除できない30%分です。
控除が80%だった令和8年9月30日までは、この割合は約1.8%でした。個人への外注が多いある会社では実際にこの分の納税増が出ており、外注先にインボイス登録を検討してもらうことを中心に考えました。
控除の割合は、令和10年10月からは50%、令和12年10月からは30%に下がり、令和13年9月30日で終わります。
また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、同じ未登録の相手からの課税仕入れが1事業年度で税込1億円を超える部分に、経過措置は使えません。
消費税は法律上の預り金ではありませんが、売上に含まれる消費税分は納税に充てる前提で扱う必要があります。普段から税抜で数字を見て、月次の試算表で納税見込み額をつかんでおくのが基本です。
免税期間のうちから納税資金を見込んでおく必要があるのは、なぜか?
課税事業者になった日から、同じ価格のままでも売上に含まれる消費税分を納めることになるためです。
料金に消費税を別立てしていなくても、免税期間の売上は取引としては課税取引で、納税義務が免除されているだけです。
期の途中でインボイス登録をした場合は、登録日からの売上に含まれる消費税分を納めます。免税のうちに納税額を見込んで資金を残しておかないと、初回の納税で資金が足りなくなるおそれがあります。
なお、インボイス登録をきっかけに課税事業者になった会社が、売上の消費税の2割を納税額にできる「2割特例」は、法人では令和8年9月30日を含む課税期間で終わります(3月決算なら令和9年3月期が最後)。
「設立から2年は免税」は自動ではありません。資本金1,000万円未満でも、設立1期目の上半期に課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります。売上と人件費がともに大きい業態では、先にこれを疑います。
判定は課税売上高と給与等支払額の有利な方で行えるほか、1期目を7か月以下にすれば判定そのものを外せます。決算月は設立の段階で決めておきます。
資本金1,000万円以上で設立した会社や、インボイス登録・課税事業者の選択届出をした会社などは、1期目から課税事業者です。
一般消費者向けの売上が中心で、取引先から登録番号を求められていない1期目の法人であれば、登録せず免税のまま据え置く判断もあります。
中間納付は、いつ・いくら発生するのか?
前期の実績にもとづいて発生するため、通常の新設法人であれば設立1期目には生じません。
法人税は、事業年度が6か月を超える法人で、前期の法人税額を6か月分に換算した額が10万円を超えると必要です。
消費税は、前期の消費税額(国税分の年税額)が48万円を超えると必要になり、税額が大きいほど年1回・3回・11回と回数が増えます。前期が12か月に満たない場合は、12か月分に換算して判定します。
決算日を設立月の前月末に近づけて1期目を長く取るほど(4月設立なら3月末決算)、初回の納税と、中間納付が始まる時期を後ろに送れます。
ただし、1期目の上半期に課税売上高と給与等支払額がともに1,000万円を超えそうな会社では、免税判定を外すために1期目を7か月以下にする置き方と方向が逆です。どちらを優先するかを先に決めます。
決算期を前倒しして大型案件の売上を翌期に送っても、翌期の納税と中間納付がその分増えるだけです。資金が回るなら当期に計上して黒字の決算を出すほうが、純資産が厚くなって金融機関の評価が上がり、次の融資を受けやすくなります。
消費税が還付になる会社でも、資金繰りの考え方は同じか?
納税見込みをつかんでおく考え方は同じですが、輸出など還付が続く会社では、還付金が入る時期と、納付に転じる場面を見ておきます。
商品の輸出による売上は消費税が免除されますが、国内での仕入れや経費には消費税がかかります。このため輸出が中心の会社では、仕入れ・経費の消費税が売上の消費税を上回り、還付が続きます。
ただし、国内向けの売上が増えて輸出の比率が下がった期や、大きな仕入れ・設備投資が一巡した期には、納付に転じることがあります。前期が還付でも、翌期の資金繰りから消費税の納付を外さないようにします。
還付金は、申告してから入金まで一定の期間がかかり、税務署から内容の確認が入るとさらに延びることがあります。資金繰り表では、入金を早めに見込みすぎないようにします。
納税資金は、具体的にどう見込んでおくのか?
月次の試算表から消費税の納税見込み額を毎月出し、納付月の資金繰りに織り込んでおくのが基本です。
原則課税の会社なら、税込の売上から、外注費・家賃・広告費など課税仕入れになる税込の支払を引いた額の10/110が目安です。たとえば月の売上が税込330万円、課税仕入れが税込110万円なら、月20万円程度です。
この式は標準税率10%の取引だけの前提で、簡易課税や2割特例の会社、軽減税率や非課税の売上がある会社では変わります。
毎月の見込み額を資金繰り表の納付月に積み上げておけば、決算後に納税額を知って慌てずに済みます。手元の資金を使ってしまいやすい会社では、見込み額を別口座に移しておく方法もあります。
源泉所得税の預り金の読み方
源泉所得税の納期の特例を使っている会社は、預り金の残高が納付月まで積み上がり、納付した月に一度に落ちます。毎月10日に納める分や住民税などが混ざっていなければ、試算表の預り金の残高が、そのまま次回の納付予定額です。
資金繰り表に入れておくもの
資金繰り表には、消費税と法人税の納付月を入れておきます。入れておかないと、期末に近づいたときの現金残高を読み違えます。
納税以外の支出も、実績から入れておきます。現場ごとに遠方へ移動する業態で、資金繰り表から漏れていた旅費交通費を入れ直したところ、決算後の納税期に現預金が底をつく見通しに変わった例があります。
資金繰りが厳しいとき、節税で乗り切るべきか?
立ち上げ期や借入に頼っている時期は、節税より納税を受け入れる方を、当事務所ではお勧めしています。
節税商品の多くは、利益と一緒に手元の現金も減らします。運転資金の薄い時期に使うと、運営そのものが危うくなります。
また、利益を薄くした決算書は金融機関の評価が下がり、次の借入の金額や条件に響くことがあります。
このとき詰めておくのは、新たにお金が出ていかない節税です。たとえば、設立登記の登録免許税など会社の設立のために払った創立費は、繰延資産に計上していても、決算で全額費用にできます。
旅費規程が期中から整っている会社では、規程の日当のうち未精算の分を、出張日と行き先の記録をもとに精算して計上できます。規程を後から作って過去の出張に遡ることはできず、日当の額が妥当な範囲であることも前提です。
口座やカードの連携漏れで取り込まれていない経費がないかも確認します。ここまで拾ってなお利益が残るなら、その期で無理に削らず、翌期以降に効く節税へ切り替えます。
よくある質問(FAQ)
Q. 消費税を払えないと分かってから対策を考えるのでは遅いですか?
A. 消費税は利益ではなく取引にかかる税のため、決算で利益を確認してから対策を考えても、税額そのものはほとんど動かせません。外注費・給与・役員報酬の比率から毎月の予測額を見積もり、納付月の資金繰りに織り込んでおく運用が前提になります。
Q. 免税事業者のうちは、消費税相当額を意識しなくてよいですか?
A. 意識が必要です。免税期間の売上に消費税はかかりませんが、課税事業者になった日からは、同じ価格のままでも売上に含まれる消費税分を納めることになります。
免税の間に資金を使い切っていると、初回の納税で資金が足りなくなります。免税のうちから、課税事業者になった後の納税額を見込んで、手元に残しておく必要があります。
Q. 中間納付を遅らせることはできますか?
A. 中間納付は前期の実績にもとづくため、通常の新設法人であれば設立1期目には生じません。決算日を設立月の前月末に近づけて1期目を長く取れば、中間納付が始まる時期そのものを後ろに送れます。
ただし1期目を長く取ると、その分の利益が1回の決算にまとまり、初回の納税額と、2期目の中間納付の基準になる税額も大きくなります。資金繰り表で見合うかを確認してから決めます。
NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。オンラインで全国対応しています。
消費税の納税資金は、決算のときにまとめて考えるのではなく、月次の段階から納税見込み額をつかんでおく仕組みが前提になります。自社に当てはまるかを確かめたい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在の税理士がいる場合のセカンドオピニオンにも対応しています。
※本記事は2026年10月時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。個別の取扱いは事実関係により結論が変わるため、実行前に税理士へご確認ください。




