この記事の要点
- 税理士がAIを使って変わるのは、税理士の作業時間ではなく「顧問先に届くもの」です。替えると、毎月届くもの・相談への答え方・社長側の手間の3つが変わります。
- 見分ける軸は、毎月届くもの・相談への答え方・AIの出力を誰が確認するかの3つです。
- 「AIを使っています」という言葉だけでは判断できません。面談で5つの質問をすると、違いが見えます。
- いまの税理士と月次が回っていて、相談相手としても満足しているなら、替えないほうがよい場合もあります。
AIに強い税理士を見分ける3つの軸と、この記事の前提
AIに強い税理士かどうかは、どのAIツールを使っているかよりも、「毎月何が届くか」「相談の答えが自社の数字まで落ちているか」「AIの出力を誰が確認するか」の3点で見分けられます。それぞれが何を指すかを先に整理します。
- 毎月届くもの:試算表のほかに、分析や資金の見通しが資料として届くかどうか。
- 相談への答え方:相談の答えが一般論で終わるか、自社の数字まで落ちているか。
- AIの出力の確認:AIに任せた工程の結果を、誰がどの時点で確かめているか。
想定しているのは、売上5,000万〜1億円・役員1〜3名のIT・Web系の会社です。freee会計やマネーフォワード クラウド会計を使っている会社を前提にしています。
記帳を顧問契約のなかで任せている会社も、自社で入力している会社も対象です。個人事業主の方は対象にしていません。
税理士がAIを使うと、毎月届くものはどう変わりますか?
替えると変わる3つのうち、1つ目は毎月届くものです。事務所によっては、数字を並べただけの試算表から、分析と解説のついた資料に変わります。
試算表のPDFを受け取り、数字の説明は面談で口頭、という月次もあります。その形では、数字が多いのか少ないのかを社長が自分で読み解くことになります。
AIを業務に組み込むと、帳簿を読む作業や資料の形を整える作業を短くできます。その分の時間を、月次の分析レポートや解説に回している事務所があります。
| 試算表を中心にした形 | 分析まで届ける形 | |
|---|---|---|
| 毎月届くもの | 試算表 | 試算表と分析レポート・解説 |
| 資金の見通し | 依頼すれば作る | 月次の資料の中で示す |
| 数字の説明 | 面談の場で口頭 | 資料として手元に残る |
資金繰り表は、Excelで作るのに手間がかかるため、別料金で作ることもある資料でした。NOMERAでも、以前は別料金でお作りしていました。
AIで短時間に作れるようになった今は、資金繰り表を出してもらえるかどうかが税理士の差になります。NOMERAでは、決算時のレポートに1年間の資金繰りの総括を入れ、月次のご報告があるプランでは月次のレポートにも資金繰りの総括を入れています。詳しい資金繰り表は、ご依頼に応じてお出ししています。
NOMERAでお届けしている月次レポートと解説動画は、税理士のAI活用で、顧問先に何が届くのかで紹介しています。
相談への答え方はどう変わりますか?
会計データをAIで読めるようになり、相談に対して影響額や選択肢を自社の数字で示しやすくなりました。
返事の日数や根拠の付け方は、AIを使っても大きくは変わりません。チャットでの相談なら、条文を並べるより、結論と次にやることを短く返すほうが読みやすくなります。
たとえば、インボイス未登録の個人の外注先が多い受託開発の会社から、経過措置の変更について相談を受けたことがあります。会計ソフトの仕訳を税区分ごとに集計して負担の増え方を試算したところ、控除割合が8割から7割に下がることで増える負担は、1年あたり50万円ほどでした。
相談した会社は、負担がどのくらい増えるかが分かったので、外注先の見直しを急がず、控除割合が次に下がる時期までに手を打つと決められました。7割の控除は2028年9月30日までの措置で、割合と期間はインボイスの8割控除が7割に下がるで整理しています。
別の会社では、売上や外注費率の前提を変えると資金繰り表と支払い計画が計算し直されるシートを作りました。面談中にその場で数字を入れ替え、無理なく払える金額を社長と一緒に確かめています。
社長側の手間はどう変わりますか?
社長側の手間では、資料の出し方が変わります。チャットで写真を送る、クラウド会計とつないで明細を取り込む、といった形にすると、紙を集めて送る作業を減らせます。紙の原本をどう保管するかは、事務所と決めておきます。
決算前に確認する事項の量も変わります。気になる取引を月次の段階で確かめておけば、決算の直前にまとめて聞かれる項目を減らせます。
AIに任せる所と、人の目で確認する所はどう分かれますか?
税務の判断、申告書への署名、税務調査の立ち会いは、AIを使っても税理士の責任のままです。
AIの出力は、誤っていても整った文章で出てきます。AIに仕訳させたまま人が確認しない形では、誤りがそのまま顧問先に届くこともあります。AIに任せた工程の結果を、最後に人が確かめる工程が欠かせません。
見分けるときは、どの工程をAIに任せ、どの工程を誰が確認しているかを具体的に答えられるか、確かめてください。同じ「AIを使う」でも、指示や手順を整えて、よくある誤りが出ない仕組みにしているかで差が出ます。
NOMERAでも、インボイスの経過措置の負担を試算したとき、最初は見直し前の控除割合(5割)で組んでいたことがありました。負担の増え方を大きく見積もっていましたが、顧問先に出す前の社内の確認で気づき、国税庁の資料に当てて作り直しました。
NOMERAで参照した実務の解説記事の中にも、期間の区切りを誤って書いているものがありました。AIで速く出すほど、最後に人が原典で確かめる工程が要ります。
NOMERAの月次の面談では、AIが集計と一次チェックで数字を整理し、担当者が確かめたうえで、社長と話します。流れは採用情報の「月次の面談で行うこと」で紹介しています。この流れは2026年10月時点のものです。
AIで自社の決算書を読むときの注意は、AIに決算書を読ませるとき、専門家の確認が要る理由にまとめています。
AIに強い税理士は、面談で何を聞けば見分けられますか?
面談では、次の5つを聞いてみてください。答えがどこまで具体的かで、AIを実際の業務にどう使っているかの違いが見えます。
| 質問 | よい答えの例 | 注意したい答え |
|---|---|---|
| 1. 毎月、試算表のほかに何が届きますか? | レポート、コメント、前月比の説明 | 「試算表をお送りします」だけ |
| 2. 相談したとき、自社の数字に当てはめて答えてもらえますか? | 会計データを見たうえで、影響額や選択肢を示す | 「一般的には〜です」で終わる |
| 3. AIは業務のどこに使い、出力は誰が確認しますか? | 工程と確認する人が具体的 | 「AIで全部自動化しています」 |
| 4. 会計ソフトとAIをつなぐ仕組みを使った効率化まで教えてもらえますか? | 自社の環境で使えるかを判断し、何をつなげば何が減るかを示せる | 「AIはよく分からないので」 |
| 5. 顧問先の情報をAIに入れるとき、どう扱っていますか? | 入れてよい情報の線引きがあり、契約書などに書いてある | 説明がない |
4つ目の「つなぐ仕組み」には、MCPと呼ばれる接続の方法などがあります。使えるかどうかは会計ソフトや契約の形で変わるため、2026年10月時点の一般的な例として挙げています。
5つ目は、契約書やプライバシーポリシーにAIの利用まで書いてあれば、顧問先の情報の扱いを確かめる材料になります。
AIに強い税理士に向いている会社・向いていない会社は?
向いているのは、クラウド会計を使っていて、社長が月次の数字を経営の判断に使いたいと考えている会社です。
| 向いている会社 | 向いていない会社 |
|---|---|
| クラウド会計を使っている、または使う予定がある | 紙の資料が中心で、変える予定がない |
| 社長が月次の数字を判断に使いたい | 対面での相談だけで足りている |
| 資金の見通しを毎月つかみたい | 資金の見通しは、決算のときに分かれば足りている |
| 資料のやりとりを、チャットやクラウドで済ませたい | 紙の決裁でないと社内が通らない |
向いていない側に当てはまる場合や、いまの税理士と月次が回っていて相談相手としても満足している場合は、いまの関係を続けるほうがよいこともあります。
税理士を替えると決めたら、いつ替えるのがよいですか?
期の途中でも、税理士は替えられます。決算の直前は引き継ぎの負担が大きくなるため、時期の選び方が大切です。
受け取る資料や替える時期の目安は、税理士を変更するときの引き継ぎ完全ガイドで整理しています。受託開発・SESの会社は、受託開発・SES向け税理士の選び方もあわせてご覧ください。
NOMERAは、受託開発・SES・広告・ECなどデジタル領域の企業に特化した、東京・西新宿の会計事務所です。初回の面談は、オンラインにも対応しています。
AIで作った月次の資料は、担当者と税理士が確認してからお届けしています。いまの税理士がいる場合の、セカンドオピニオンとしてのご相談にも対応しています。
参考文献
- 税理士法(e-Gov法令検索) —— 第2条(税理士の業務)、第33条(署名の義務)、第38条(秘密を守る義務)、第52条(税理士業務の制限)
- 国税庁 令和8年度税制改正特集 —— インボイス制度の経過措置の見直し
よくある質問(FAQ)
Q. AIを使う税理士は、顧問料が安いのですか?
A. 一律に安いとは言えません。AIで浮いた時間を値下げに回すか、届けるものを増やすことに回すかは、事務所の方針で変わります。
Q. 自社でChatGPTなどを使えば、税理士は要らなくなりますか?
A. 要らなくなるとは言えません。AIの出力が制度に合っているかを判断するには、専門の知識が要ります。また、他人の求めに応じて税務代理・税務書類の作成・税務相談を行えるのは、税理士などに限られています。
Q. 顧問先のデータが、AIの学習に使われることはありませんか?
A. 使われるかどうかは、事務所が使うAIサービスの設定と契約で決まります。税理士には税理士法で秘密を守る義務がありますが、AIにどの情報を入れるかは事務所ごとの決め方なので、データの扱いを確認してください。
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※本記事は2026年10月時点の制度・サービスの内容をもとにしています。




